皆様から日頃よりSPIOにいただいております温かいご支援に厚く御礼申し上げます。
SPIOは皆様のご寄附によって助成事業を行う主務官庁が内閣府の公益財団法人です。SPIOでは長年にわたり、わが国を訪れる若手外国人留学生及び日本人若手研究者の海外留学助成や海外での学会発表のための渡航費などの助成を行ってきました。この事業が継続して行われたのは皆様からの賛助費、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のご支援に加え、杉田麟也先生および戸田俊太郎氏のご寄附があったからです。そのご寄附は平成27年度で終了しましたが、幸い平成29年度からは故曽田豊二先生のご遺志によりSPIOの助成事業に1億円のご寄附をいただき、曽田先生のお名前を冠して研究助成金及び奨学金の助成事業を継続しております。内外の若手研究者を育成するためにご寄附を役立てることは曽田先生のご遺志に適うことと考えております。
SPIOは2019年に50年の節目を迎えました。2010年には『SPIO40年史』、2022年には『SPIO50年史』を刊行しました。この50年の歴史を振り返ってみます。
財団法人国際耳鼻咽喉科学振興会(Society for Promotion of International Oto-Rhino-Laryngology、略称SPIO)は昭和44(1969)年11月28日に設立されました。歴代の理事長の諸氏と担当年限は次の通りです。初代佐藤重一(1969-1981)、2代小野譲(1981-1985)、3代切替一郎(1985-1989)、4代名越好古(1989-1993)、5代曽田豊二(1993-2003)、6代野村恭也(2003-2022)。7代目として小生が2022年6月に就任しました。この間の詳細な歴史は前理事長の野村恭也先生が『SPIO40年史』に解説されておりますのでご一読いただけると幸いです。要約しますと、きっかけは日本耳鼻咽喉科学会が担当した1965年に東京で開催された第8回国際耳鼻咽喉科学会でした。日本が提案し承認されたInternational Federation of Oto-Rhino-Laryngological Societies: IFOS)の初めての事務局は日本に置かれ、Chairmanは小野譲先生でした。その事務遂行のための財政的支援が必要であるとし、その目的のために設けられたのがSPIOであったのです。初代の理事長は国際学会会長の佐藤重一先生でした。SPIOは学問や技術の向上に貢献すると同時に、東南アジア諸国に先進の欧米の医学との橋渡しをすることを目標とする財団法人化を目指すこととし、1969年文部省(現文部科学省)より法人設置の許可がおりました。1974年には欧文誌“Auris Nasus Larynx: ANL”のVol.1, No.1が発刊されました。
その後IFOSの事務局はメキシコに移管されたためSPIOの事業内容が変わり、ANL誌の発行が主たるものとなり、1980年よりANLの優秀論文賞が設けられ、2001年より“SPIO Award”として引き継がれております。1993年に曽田豊二(元日本耳鼻咽喉科学会[(日耳鼻、現日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)]理事長)がSPIOの理事長に選出され、SPIOは日耳鼻とより一層の協力体制をとるようになりました。1992年頃よりSPIOを特定公益増進法人にすべく努力が始まりましたが、文部省よりANLの発行は収益事業と見なされ、SPIO事業よりはずすよう指示を受け、1997年からはANL発行は日耳鼻が引き継ぎ、Elsevier社より出版され今日に至っています。
1999年に文部省より特定公益増進法人の認可がおり、寄附金については税制上の優遇措置が認められるようになりました。特定公益増進法人にすべく尽力されたのが1993年~2003年の10年間SPIOの理事長であった故曽田豊二先生であり、現在のSPIOの基礎を確立すべく尽力されました。その先生のご遺志で、すでに述べましたように多額のご寄附をいただきSPIOの発展を引き続き支えていただいております。
なお2012年に特定公益増進法人より公益財団法人に移行しました。税制上の優遇措置は変わりません。野村恭也前理事長のご尽力で、SPIOは新たな事業として印刷支援のSPIO出版、東日本大震災への募金活動、SPIO市民公開講座、ブータンにおける鼓膜手術の支援事業などを適宜展開してまいりました。
SPIOの運営は使途を決めない一般寄附が財政的に重要であります。皆様が学会を担当されることが決まった後に同窓会他より募金をされますが、SPIOがその事務手続きを担当させていただいております。なお、SPIOへの寄附に対する免税措置は日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会および関連する学会以外の学会からも、演者、司会等に耳鼻咽喉科の関係者がおられればSPIOをご利用することが可能であることをご紹介させていただきます。現在の規定ではその募金の額の4%を事務手数料としてSPIOがいただき、その一部は一般寄附として利用させていただくしくみになっております。このようにSPIOは公益財団の性質上、規則で寄附のみで運営され、収益事業は行うことは認められておりません。
今後ともSPIOを通して耳鼻咽喉科が、頭頸部外科学及び関連分野への貢献に寄与してまいりたいと考えますので、皆様には引き続きご理解とご支援をいただきたくお願い申し上げます。